5月12日(木)に、グローバルコースが目標とする「地球市民」の意識づけとして行われている学校設定科目『国際協力』の授業が行われました。
生徒たちは、世界の多様性や課題についてSDGsの視点で学ぶことをめざし、事前の授業で対象国マラウイや協力隊の活動の現状を調べ、班ごとの発表を経て出前授業に臨みました。
今回の出前授業は、平成24年、JICA北海道からアフリカのマラウイに派遣された管理栄養士の大山達也さんを講師として展開されました。
大山さんからはまず、「いろいろな種類のSDGsの眼鏡をかけて見よう」という呼びかけがありました。
マラウイについての基礎知識「北海道+九州程の面積」「一次産業中心でたばこ・紅茶・砂糖」「アフリカでも治安の良い国で格差があまりないが、等しく貧しい」などが話されたあと、SDGsにつながるマラウイの課題です。
マラウイは初等教育の5年生で教科書がすべて英語になる“5年生の壁”といわれる問題があり、それを超えるのがむずかしい。
また、教師が少ないという現実。
どこにでもごみを捨て、集めたごみは何でも燃やす習慣(町中がすごい煙だそうです)。
これらはSDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」そして目標11「住み続けられるまちづくり」の対象。
大山さんのお話では、マラウイはSDGsの目標17項目のうち、目標14「海の豊かさを守ろう」以外はすべて対象ということです。
大山さんが栄養士として活動したのはカロンガ県中央病院。
地べたに患者さんが雑魚寝しています。
マラウイの医療事情は大変厳しく、すべて無料だが、停電や断水がしばしば起こり、質の悪い国営病院と、質は良いが、医療費のかかる私営病院があります。
大山さんからは、貧しく、低栄養で病院に運ばれてきたやせ細った子どもの画像が示され、その子は間もなく亡くなったとの説明があり、生徒たちに「皆さんだったらどうしますか?」という問いかけがありました。
・・・しばしの沈黙の時間。生徒たちはそれぞれ考えています。
・・・こののち、大山さんからまさにJICAとしての実際の活動が一つの答えとして提示されます。
「病院でできることはあるのか?」「病院に来る時点で手遅れ」「問題の一番は「地域」に注力すること」大山さんはまさに管理栄養士の視点から村へ行って村の栄養課題を解決しようとしたのです。
「モリンガ」という自生する木に注目。
この木の葉は栄養が豊富なのだそうです。
大山さんはこのモリンガの葉で料理教室を開き、現地の人に教え、彼らがさらに村人に教えるという広がりができ、「モリンガの種ください」「モリンガ植えたい」という輪が広がっていったそうです。
大山さんはさらに現地の看護師さんと村の奥の奥まで行き、栄養についての話をしたり、お母さん向けの教育に携わったり、歌と踊りで表現するなど幅広い活動を続けました。
一方、病院では「糖尿病講座」も開いたということです。
途上国のマラウイでも存在する「生活習慣病」・・なぜ?と大山さんは生徒たちに語りかけます。
栄養不良の二重負荷。
同じ地域に「低栄養」と「過栄養」が存在するのはなぜ?その答えは、安く手に入るコーラなどの清涼飲料水、ティータイムなどに砂糖をいっぱい入れる習慣。
現地に行かれた方の実感のあるお話でした。
最後に生徒から予め大山さんに向けられた質問への答えが画面上に示されました。
Q.マラウイに行って成長を感じられたことは何ですか?
A.レジリエンス(うまく適応できる)力が身につきました。
Q.JICA海外協力隊の活動が今どのように生かされていますか。
A.物事をいろんな角度から見られる視点。
その中では大山さんから画面上に示された次のメッセージが印象的でした。
「異文化の壁を越えるのではなく異文化と共に生きる。自分の価値観の範囲は思っている以上に狭いもの。
理解できないものを無理に理解しようとせずにそこにあることを認識するだけでいい」
生徒たちにとって、とても深く充実した時間となりました。