前回7月に開催されたアニマドーレ農作業体験バスツアーに続いて、今回はオンラインでの農家訪問が行われました。 8月20日(土)13:00~16:00 会場はジョブキタビル会議室です。 会場参加者は6名、オンライン参加者13名の合計19名。 (当日参加できなかった方には、後日、動画をご覧いただいています。)
3人の農家さんに語っていただきました。(2人目のコモレビファーム 稲野辺さんのみ、会場にお越しいただき直接話してくれました)
◉1人目は、駒谷牧場(様似町)の西川 奈緒子さん
西川さんは、肉牛をほぼ野生の状態で育てている農家さんです。 ・一年中放牧・自然交配・自然分娩・自然育児・牛の本来の食べ物である「草のみ」で育てる
牛は自分が過ごしやすい場所を選び、牛舎は開けっ放しにしていても、牛が牛舎に戻ってくることはほとんどありません。野生の牛は敵を威嚇するのですが、西川さんのことすらも敵だと思っているのだそう。 野を駆け、冬も雪の上を走り回り、そんな風に育った牛の肉質は硬く、赤身でサシが少ない牛肉は日本では評価されません。それでも、興味を持ってくれた、肉屋さん、料理人、消費者が、「チームジビーフ」という応援団を作ってくれました。(ジビーフは、ジビエ+ビーフからつくられた造語です)
2001年からの10年間に起きた、口蹄疫、BSE、牛肉偽装などの問題で、一度は牧場の閉鎖まで考えた西川さんがたどり着いた結論、それが、完全放牧の野生牛でした。まだ生産量は少ないものの、月に2頭ずつ、年間24頭の牛を出荷できるようになり、経営も安定しています。それも、まわりの人々の支えがあったからこそ、と西川さんは話します。
1.畜産の原点(人間が食べられない草を食べて、乳や肉に変えてくれる) 2.アニマルウェルフェア(家畜福祉/牛らしく生きている間は健康的で幸せに)の精神 3.100年、1000年先も、胸を張って後世に引き継げる健康な農地を これが、西川さんが大切にしていることです。
そして、最後に、「目標を見つけたら突き進むだけ。自分があきらめなければ、負けや失敗にはならないから。そして、笑う門には福来たるは本当だから、いつでも笑顔を忘れずに」というメッセージを、送ってくれました。
◉2人目は、コモレビファーム(札幌)の稲野辺 努さん
東日本大震災を機に、都会からの移住を考え始めた稲野辺さん。 当時は、今ほど各市町村が新規就農者の受け入れに積極的ではなかったこともあり、どこに行っても、あまりいい顔はされなかったそうです。そんな中、まさか札幌で就農が実現できるとは!?実は、札幌には今でも農村地帯が多く存在していて、ここ10年くらいの間に札幌で新規就農した方が何人もいるのです。
稲野辺さんが選んだ農法は、細かく砕いた木のチップを畑に入れる、それ以外には堆肥も肥料も一切使わないというものです。 何年もの間、満足に作物が育たず、農業で収入を得られる状態ではなかったと。 理論上は、チップが土の中で分解する過程で微生物が活性化し、作物が育ち土の環境が整うのだそうです。冬の間、必死で除雪のアルバイトをしたり、自分の信念を貫いていた稲野辺さんですが、さすがにこれ以上はと考え、ある時、肥料や農業資材を扱っている企業の方に相談をすると、「こんなにも拘って頑張り続けてきたのに、肥料を入れるのか?もう少し頑張ってみろ!」返ってきたのは、そんなひと言でした。 そして遂に、作物が育ち始め、プロのミニトマト農家としての道が始まります。「僕はミニトマトが好きなわけじゃない。ここの環境や農法に一番あっていたのがミニトマトだっただけ」と稲野辺さんは笑います。 さらに今年は世界情勢が原因で、肥料の値段が2倍にも3倍にも値上がりをしています。「遂にお前の時代が来たな」そんな言葉をまわりの農家さんからもかけられるそうです。 100人居れば、100通りの作り方があるのが農業で、正解も不正解もない。 ただこれが、稲野辺さんが見つけた、持続可能な農業のカタチなのです。
◉3人目は、えづらファーム(遠軽町白滝)の江面 暁人さん
江面さんは、新規就農者としては珍しい大規模の畑作農家からの事業継承で、2012に就農しました。 最初から農家になりたかったわけではなく、都会での仕事に不満があったわけでもないのですが、将来、子育てをどのような環境でするのが良いか?子どもとの時間を大切にできる仕事は?と考えた時に、農業にたどり着いたそうです。
就農以降は、 ・2012年 農産物のネット販売を開始 ・2013年 農作業の住み込みボランティア受け入れ開始 ・2015年 農家民泊(簡易宿泊所)の認可を取得 ・2016年 農作業を通じた企業研修を事業化 海外からの住み込みボランティア受け入れ開始 ・2017年 近隣の空きやを利用した一棟貸し(簡易宿泊所)の認可を取得 ・2018年 正社員雇用を開始 ・2019年 じゃがいもを使った加工品の商品化・2022年 収穫レストラン「TORETATTE」を開業 と、毎年のように新たなチャレンジをしてきました。
就農当時から、「毎年新たなことにチャレンジします!」と話していて、まさに有言実行、それを農作業と平行して行っているのが驚きです。 今では、遠軽町白滝という人口500人程の地区に、人口以上の交流人口を生み出しています。 農村・田舎は何もない、でも「何もない」ことが都会の人にとっては大きな価値になる。 農業は、昔から言われる3Kではなく、未開拓の部分が多いからこそ、発想や工夫しだいでビジネスチャンスはいくらでも見いだせる。そんな江面さんが今後、農を軸にどんなビジネスを展開するのか、これからも目が離せません。
三人三様の農業のカタチと生き方。高校生はどんな風に感じたのでしょうか?高校生からの感想も楽しみです。