市立高校学校間連携指定事業 アニマドーレ2024第3回 【酪農学園大学一日体験】(後編)

酪農学園大学一日体験(後編)です!充実した一日をご覧ください。

4.『おいしい肉をいつまでも食べられる世界をめざして』 
食と健康学類 岩﨑 智仁(いわさき ともひと) 教授(食肉科学ユニット)

午後は実験室にて『おいしい肉を、いつまでも食べられる世界に』と題した食肉に関する研究の講義が行われました。

岩﨑先生からの最初のお話は、「人類は経済的に豊かになるとお肉を食べるようになる。世界的人口増加の状況を考えると、人が食べる肉の量も2050年には、2倍になると予想されている。人口が増えるとタンパク質クライシス(タンパク質の需要と供給のバランスが崩れる)になり、今のままでは必要な食肉量は賄えない可能性がある。」と食肉の近い未来についてでした。当たり前に食べている肉が食べられなくなる可能性があると知り、高校生も驚いていました。
岩﨑先生は、世界で1番食べられている『鶏肉』の研究を行っています。品種改良を長年続けてきた結果(これだけが原因ではないようですが)、鶏の胸肉異常が世界各国で報告されるようになり、特に「異常硬化胸肉」が問題視されているとのこと。異常硬化胸肉は全体の数%の割合ですが、、もともとの飼育数が多いため大量の胸肉が廃棄されたり、品質低下を理由に低価格で取引されたり、この問題の解決は大切な資源を無駄にしないことにつながります。岩﨑先生は、他分野の研究者でもある本学獣医学類の教員とも共同して日々研究活動をされているそうです。

 

お話の後には、実験体験として、専用の機器を用いてマイクロメートルの厚さでの薄切に挑戦させてもらいました。動物組織を光学顕微鏡で観察するときには、ロウ(パラフィン)で固めた組織を薄く切る必要があり、この作業を体験しました!

最後に、何のために研究していますか?との問いには「開発したいとか誰かの役に立ちたいというモチベーションよりも、純粋に知りたいとか、これどうなっているんだろう?とかを大事にしないと研究を長くはできない。自分の好奇心を大事にしています。」と研究者としての大切な考えを教えてくださいました。

(高校生 感想 Aさん)
酪農大に来て、食のリアルを身近に体験することができましたが、いつも何気なく食べている食事にもっと感謝する必要があると思いました。私は食の栄養に興味があって、将来はそれに関することができればいいと思っていましたが、研究や畜産などもやってみたいと思いました。将来の選択肢の幅がたくさんあることを知り、視野が広がりました。

 

5. 『ネイチャーポジティブの実現へ向けて:生物多様性保全に関する技術開発』 
環境共生学類 鈴木 透(すずき とおる) 准教授(保全生物学ユニット)

続いて『野生動物と自然環境の相互関係を科学する』をテーマに研究している鈴木先生からの講義です。
冒頭に生物多様性(地球上に生息する多様な生き物とそれらが織り成す生命のつながり)に関する日本や世界の動向についてお話があり、聞き慣れない『ネイチャーポジティブ』というフレーズが出てきました。
『ネイチャーポジティブ』とは、日本語訳で「自然再興」といい、「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」ことを指します。(環境省HPより)
「生物多様性について、今は自然が劣化していっている状態。それを2030年までに回復させるという『生物多様性国家戦略』が日本にはあり、生物多様性を守るだけではなく回復(=ポジティブな状態)させることが大切なんです」
という自然と野生動物の全体像のお話からスタートしました。

「実は、なぜクマが増えているのかわからないんです。専門家であっても野生動物の生態の全てを把握できているわけではないのです」
だからこそ、野生動物への対策を考えるためには「動物をよく知るところから」というシンプルな取り組みが大事なのだそうです。(ちなみに鈴木先生はネコが好きで、中型の野生動物の研究をされています)
野生動物の行動範囲を把握するためにGPSを用いることがありますが、野生動物用GPSは使い捨てとなるため、何度も使うには研究費がかかりすぎるそうです。そこで鈴木先生は、5分置きに行動経路を確認できる安価なGPS首輪をご自分で開発しました。『どこに行ってるのか』『行った先には何があるのか』などの情報から習性がわかり、そのデータから野生動物への対策を講じることができるとのこと。
またドローンで撮影したVR映像を環境教育用にオープン教材として公開していることで、自然を身近に感じてもらう取り組みも行っています。

最後に高校生へのメッセージをいただきました。
「イノベーションは新結合。新しいモノの創造は何かと何かの組み合わせ。自分は生態学分野と工学分野をつなげることで、カタチにしています。いろいろな分野を、どういう風につなげるかは、みなさん次第。上手く組み合わせることが大切。大学は知識を学ぶところでもありますが、知識の使い方こそが、これからの時代には大切です」
ゼロからイチを創り出すのは難しくても、世の中にあるものを組み合わせることでいくらでも新しいものを生み出せるのですね。
(高校生 感想 Bさん)
どうつなげて、どう社会につながるのか。大学は知識を学ぶだけじゃなく、使えるところだと思いました。新たな野生動物への関わり方を知ることが出来、北海道には研究材料がつまっているなと感じました。まだまだ知らないことばかり、知る余地しかない。ワクワクしました!

 

6. 『キャンパスライフ紹介』 
循環農学類 3年 三木 ひなた(みき ひなた)さん
食と健康学類 1年 作山 大暉 (さくやま だいき)さん
1年生の作山さんは、昨年高校生としてアニマドーレに参加。今年はスタッフ側として参加しています。「アニマドーレの魅力は、一緒に考えてくれる大人や仲間がいる場所なので、いろんなことに挑戦してほしいと思います。」と高校生にメッセージをくれました。

三木さんは大阪府出身。マンガ「銀の匙」を読んで、自分の好きな動物がたくさんいるキャンパスと北海道という自然が溢れる環境で勉強がしたいと酪農大への進学を希望。「大学を選ぶときに、将来何をしようっていう堅苦しいことではなくて、今の自分が何をしたいかってことを大切に。最後の学生生活である大学という時間、何をすれば充実した大学生活ができるかを考えて選ぶと、キラキラした学生生活が送れますよ」と、三木さんらしい応援メッセージを伝えてくれました。

高校生の感想 C さん
3人の研究について聞かせいただき、全員が楽しそうにしているのが印象的でした。また、大学内のことだけでなく、生産者や消費者についても考えていることがすごいと感じました。農学部に行きたいと思っていましたが、より行きたくなりました。なんとなく将来について考えられたのが良かったです。

高校生の感想 D さん
大学という環境だからできる社会貢献だと思いました。酪農や農業という仕事になったときに、お金が切り離せない部分だと改めて感じました。生き物の体のことをここまでコントロールする技術があるのかと驚き、動物や自然に普通では起きないことが起きているという人間の影響力を感じました。

 

 

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