清田高校が3年間かけて探究する「総合的な探究の時間」は、校訓の「なおもっと」を冠した『なおもっとプラン』。2年生の探究テーマは『さっぽろ探究』。「社会の一員として地域へ何をどのように貢献できるか」を探究するものです。
その全体発表会が2月7日(水)6・7校時、清田高校体育館を会場に行われました。2年生6クラスの生徒たちは4人でグループをつくり、昨年4月から発表作品のタイトルとリサーチクエスチョンを決め、フィールドワークや関係者への取材などを重ねながら探究を深めてきました。
今回は生徒の投票で選ばれた16グループ(1グループ4人で構成)が8グループずつ前半・後半に分かれブース発表。発表時間は5分。2分間の移動・準備を4回繰り返します。発表者以外の2年生は、それぞれ4回異なるブースを選び、移動して発表を聴きます。
発表者は、わかりやすく工夫された「パワーポイント」を駆使しながら、
時にはユーモアを交え、笑いを誘いながら巧みにプレゼンテーションを進めます。
発表作品は札幌、さらに清田区にスポットを当てたもので、それぞれにリサーチクエスチョンがあります。
作品『KIYOT SWEETS Go! abroad』のリサーチクエスチョンは「清田区の観光客を増やすために空港やデパ
ートに清田スイーツのポスターを貼る」 作品『ノーマライゼーションを目指して』は「季節ごとのレクリエーションを通して高齢者と学生で交流する」 『子育てに「ほっと」なまち、清田』は「子育て世代がより快適に子育てするために、長期休暇の期間、児童館で子どもと高校生が触れ合う場を設けたり、子育て支援宣言を広めるのはどうか?」・・・など、日本全体が抱える社会の現状を垣間見ることのできる発表・リサーチュクエスチョンが並びます。
その中には、「いじめ」という、生徒たちに身近な、今日的な教育問題をテーマにした作品もあり、「札幌の学生が楽しく安心して学校に行くためには」「当事者意識をもち、傍観者にならない」というプレゼンテーションが響きます。
こうして熱いブース発表が終了。その後、聴き手となった生徒たちによる評価・投票が行われ、上位3グループが選ばれました。
後半は休憩をはさみ、選ばれた上位3グループによるステージ発表。この発表には今年度探究の基礎を学び、来年は同じ発表会の主役となる予定の1年生全員が体育館に集合し、聴き手となります。
投票の結果3位となった発表作品は『観光大国清田への道』。 そのリサーチクエスチョンは「観光を通して
人が集まる街にするために、観光のあり方を学び、清田に作れる可能性の高い、市場、アドベンチャートラベルについて提案する。」というもの。
発表では、札幌の観光客の9割が道内から、外国からは9割がアジア圏であること、問題点として「季節偏在」「地域偏在」があると分析。そのうえで、これからは人を集めるプロモーションが不可欠、そしてウポポイを例に「モノからコト」への形態の変化が大切と主張します。そして清田にある白幡山に注目。アカゲラなどの野鳥やモモンガなどの野生動物が生息する高さ231メートルの山。その環境を生かしたアドベンチャートラベルが提案されました。
2位は『地域交流の活性化』を発表したグループ。リサーチクエスチョンは「廃校などの施設を利用し地域交流を活性化させたい」です。人口減少などで地域交流が減少しているという問題意識がベースです。
発表ではまず聴衆に「廃校クイズ」が出されます。「2002年から2020年まで、日本全体廃校となった学校数は次のどれ?
「①85校 ②858校 ③8580校」・・・どれかな?考える1年生。正解が③と明かされると、会場は「おーっ」という反応。旧上野幌西小学校を例に、教育と地域を合わせた多目的スペース、年齢、性別関係なく交流できる場、宿泊施設、レンタルスペースなどをもつ廃校利用のアイデアが示され、可能性の確かな豊かな、とてもリアルな発表となりました。
そして1位は・・・『清田区に新たなイベントを』。リサーチクエスチョンは「清田区を発展させるために、新しいイベントを企画しよう」
この発表の素晴らしさは、「イベントを開催するに当たって最も大切なことは何か?」というまさに探究の出発点となる問いを設定したこと。
そしてそれを札幌観光協会に出向き、直接担当者から回答を聞いて考察を進めたことです。担当者の回答は「何よりも安全第一であること。そして発信は清田区にしかないもの」。説得力があります。そこでグループが考えたイベントが『漫画』と『音楽』。清田高校卒業生からは何人もの漫画家が誕生しているとのこと。PR漫画、漫画喫茶、スタンプラリーなどのアイデア。音楽は『きよフェス』の拡大をめざす。そのための大きな会場の見通しも語られました。
発表者自らが漫画と音楽を作成し披露。1年生から笑いや驚きの声が・・・リアルでとても生き生きとした楽しい発表です。発表最後のパワーポイント画面も、映画のエンディングのように、製作者、出演者などのテロップが流れるように作られ、1年生は魅せられていました。
全体発表終了後、「発表者も、聴く方も素晴らしかった。『探究』は現在の学校教育のキーワードです。
得点では測れないもの。ひとり一人が自分の興味の中で問題を見つけ、いろいろな人と対話し、関わりながら深めていくもの。これからも皆さん続けていってほしい。」
横関直幸校長からこのような総評、生徒たちへのメッセージがあり、発表会は終了しました。