「SCS STARTUP SCHOOL U18」(※1) のステップ3、フォローアップレクチャーが開催されました。
前回ステップ2で起業した高校生スタートアップ(※2)5社による事業の進捗状況報告会(ステップ3)が、9月17日(土) 北海道新聞社2階のコワーキングスペースを会場に行われました。 参加校は啓北商業、開成中等教育学校、国際情報高校(道立)。 今日の目的は、互いの進捗状況を共有してアドバイスを受け、最終成果発表会に向けてピッチ(※3)やスライド資料作成のレクチャーを受けることです。
※1 SCS STARTUP SCHOOL U-18とは:札幌市が主導するスタートアップの発掘・育成支援プロジェクト「STARTUP CITY SPPPORO(通称SCS) 」が札幌市立高校学校間連携指定事業として、高校生向けに実施する起業体験プログラム。 ※2 スタートアップとは:テクノロジーを用いて社会にイノベーションを起こす、世の中の課題を解決するために短期間で急成長を遂げる企業のこと。 ※3 ピッチ:短い時間・簡潔な言葉で相手に提案を伝えること。
最初に、ファシリテーターの豊田睦雄さん(株式会社D2 Garage)からピッチやスライド作成についてのレクチャーを受けました。 その後、すぐに進捗状況を報告するスライドを作成。PCを持ってこなかった生徒にはタブレットが貸し出され、すぐに使いこなしているのが印象的でした。また、報告スライドもほとんどの会社はレクチャー後の1時間で作成しました。
作成中に、生徒さんから今日の抱負を聞いてみました。 男子生徒は、「前回実際に起業している経営者のメンターから、『日本のお菓子の品質はゴディバにも匹敵する』など、興味深いお話で知らない世界に引き込まれたので、今日も期待しています」 隣の女子生徒は、「今日は前回の抽象的な内容をどう具体的にしていくかが楽しみです。それから、他の会社の発表にも興味があります」
5社の進捗状況を紹介します。
1 Stop ASE株式会社 (前回最優秀賞)
高校生の日常の課題、リュックを背負ったときの背中汗対策として、スポンジ製の「あせたさん」を提案。これは、背中に汗をかかないように、かいてもすぐ乾くようにリュックに取り付けて、背中との間に3~5㎝の風通し空間をつくるという商品。50人を対象にマーケット調査をする中で「汗をかかないようにしてくれる商品が欲しい(82%)」という結果も開発の根拠。参加者からは、スポンジの位置調節機能を簡単にしては、スポンジは布で被わないのかなどの質問がありました。
2 株式会社いっぱいぽてち
ポテトチップスに特化したサブスク(※4)。最初の企画は「すっぱいセット4袋(770円)」。会社の特徴として顧客とポテチのマッチングシステムの提供、企業の広告塔としての利用、発売前の商品や限定品の提供があげられました。将来のビジョンは、実店舗を持ちポテチ食べ放題の実施です。発表後、770円という値段設定の難しさ、送料をどうするか、もっとかさばらない商品にしてはどうかなどという意見が出ました。 ※4 サブスクリプションのこと:定期的に料金を支払い利用するコンテンツやサービスのこと。定期購読、継続購入。
3 株式会社シバハウス
生きがいのない高齢者や生活に不満をもった高齢者をなくすため、高齢者向けの1か月単位で住むシェアハウスを提案。これにより、ハウス仲間と仲良く楽しく過ごせる、暇な時間が無くなる、気分転換になる等の利点があげられました。その後の交流では、資金調達の方法、チラシによる告知では浸透しないのでは、多世代の利用は想定しないのか等の意見が。
4 Kanri株式会社
「kanriくん」という小学生の忘れ物防止アプリの商品化を企画。忘れ物が多い自分だからこそ、忘れる人の気持ちが分かり、減らすことに向いているのではというのが出発点。小学生をターゲットにしたのは、忘れ物をしたとき自ら対処しづらいからというのが理由。アプリの特徴は、持ち物リストの事前通知、リストは音声登録できるので簡単、忘れ物をしなかったらポイントや画像が得られる等です。発表後、対象は小学生だけでなく広くしては、なぜ忘れるのか、何を忘れるかなど課題を深掘りしていけばターゲットが明確になるのでは等の意見が出ました。
5 株式会社ティーチングマッチ (前回最優秀賞)
教えたい人と教えてほしい人をより早く引き合わせ、質問者と教えたい人が会話できる「勉強中の人が集うアプリ」作成を目指しています。特徴として早いレスポンス(一人で勉強中のわからないに即対応)、教えて学べる(教えるには完全な理解が必要)など。また、友人103人を対象にアンケートを実施し、アプリの特徴づけの根拠にしています。交流の中では、教えるということをもっと重点化する、簿記や会計なども対象にしては、教えるのが下手な人とマッチングされたら等の質問やアドバイスが。
発表後はメンタリングタイム。これは、実際に活動し経験豊富な起業家からアドバイスを受けるという、学校では体験できない本当に貴重な時間です。 メンターは、嶋本勇介さん(株式会社あしたの寺子屋代表取締役)、赤坂美奈さん・小田貴志さん(株式会社D2 Garage)。嶋本さんはオンラインで、赤坂さん、小田さんは別室で相談。 メンタリングタイムは「お願いします。株式会社~~です。私たちの会社の事業は~~」で始まります。メンターは決して否定せず生徒さんの相談に耳を傾けます。
メンタリングタイムの後、生徒さんに感想を聞いてみました。 ある男子生徒は、「嶋本さんからの『最後は気合と勇気です』の言葉が印象的でした。例えばモノの値段を決めるとき『これ高くない?大丈夫?』と声が上がったとき、『これで大丈夫ですと言い切る気合も必要です』の言葉、納得です」 隣の男子生徒は、「大人のメンターとやり取りをしていくうちに、企画の形が変わっていくのが楽しかったです」
最後に、メンターに取材しました。 小田貴志さんは、「私達の高校のときは起業家教育がなかったので、今の高校生は若いうちから経験できうらやましいです。今回のような機会をもっと拡大し、札幌市としてもチャレンジできる環境をもっと作って欲しいです」
赤坂美奈さんは、「前回審査員の村田利文さんからのフィードバックですが、『高校生には凝り固まった発想の大人がビックリするようなアイデアがたくさんありました。また、大人はハードルがあると超えられないが先に立ちますが、高校生はハードルは超えるものというポジティブな発想ですばらしかったです』という村田さんのお話でした」
今日の取材から、高校生スタートアップ5社による事業が、さらに充実していくことが期待されます。 11月12日(土)のステップ4最終成果発表会が本当に楽しみです。