数理データサイエンス科が開設されて2年目を迎えた旭丘高校は、今年度スーパーサイエンスハイスクール(SSH)校の指定を受けました。研究開発課題は「次世代を担う科学的教養を備えた数理データサイエンス人材の育成」です。
12月6日(水)、旭丘高校の数理データーサイエンス科の生徒が、研究の成果を発表しました。各学年の発表を科全体で聴き合い、質疑を行う形で行われました。 午前には、「基調講演」、2年生の代表班による「オープニングプレゼンテーション」、そして、「※SDS探究発表会」と題し、2年生による16の研究班のオーラルセッションが行われました。 午後には、「さっぽろ探究ポスターセッション」 1年生19の研究班のポスターセッションが行われました。このポスターセッションには、開成中等教育学校の生徒も加わり、市立高校SSH指定校2校の交流の場となりました。
※SDS(サンライズデータサイエンス)は学校設定科目で、データサイエンスの基本を身に付け、探究的な学習を行います。
【開会式 8:45−8:50】 学科長の坂庭康仁(さかにわ やすのり)先生から、生徒たちに励ましのメッセージが送られました。「成果は未完成でOK!サイエンスの魅了を楽しんで!これからの姿勢が大切、今日がスタート!」
【基調講演 8:50−10:00】 タイトル:「生成AI入門〜AIの歴史と最新研究〜」 講師は現役のデーターサイエンティストである株式会社Design Shift 代表取締役の田浦 將久(たうら まさひさ)氏。
最初に、質問はスマホで適宜入力するようにと画面でQRコードを読み取るように指示。そして、自己紹介の後、次の3項目に分けてお話しされました。 <第一部:AI研究の歴史と第三次人工知能ブーム> AIの歴史は1960年代に遡り、現在は第三次人工知能ブームにあり、ビッグデータ、機械学習、ディーププラーニング(深層学習)、データサイエンティストの4つに焦点を当て、検索された数を示すグラフを提示。そして、生成AIが登場に至るまでの起きた衝撃的な出来事、ディープラーニングとトランスフォーマーという革新的な技術を具体的に紹介。人工知能のエラー率の激減やスピードアップについて説明されました。
<第二部:第四次人工知能ブームの到来と生成AI> 2023年11月に公開されたばかりの生成AIであるStable Diffusion (image-to-video)など、様々なAIの具体例を紹介。実際にQRコードで読みとり、生徒自身のスマートフォンで体験することができました。英単語を入力すると画像ができたり、静止画像から動画を作り出したり、音楽を生成してくれるAI、音声を作り出すものなどを紹介。最後にマルチモーダルと呼ばれる最新の生成AIであるChat GPTについてのお話。具体的に、札幌市のオープンデータを入力した分析結果が示されるなど、その能力の高さが披露され、人間の働き方の変化をもたらすだろうともお話しされました。 但し、ChatGPTをはじめとする生成AIは、悪用もできる、他人の写真を勝手に使ったりしてはいけないなど、モラルの面にも触れましたが、適切な使い方さえすれば、今後の生徒の研究活動のサポートをしてくれる存在、強い味方にもなり得るとお話しされました。
<第三部:高校数学で理解する機械学習の基本原理> 生成AIの発展は、数学的思考能力が鍵を握っていると説明され、「研究者たちは数学が生成AIの最前線であると考えている」という記事を紹介しました。
<最後に:これからの世の中どうなっていくのかについてのメッセージ> 興味のあるなしに関わらず生成AIは誰にとっても無視できない存在になる。仕事を奪われる存在になるのか、新たな仕事創り出す存在になるのか?今日の内容も1ヶ月後には古い話になる。この変化を楽しめるように日々学んでいってほしい!
生徒たちはAIの進化のスピードに驚きを隠せない様子。「こんなにAIって進んでるんだぁ。」、「数学かぁ!」など隣同士で話す声が聞こえました。
【オープニングプレゼンテーション 10:15-10:30】 タイトル:「ChatGPTの性能確認」 2年生17グループを代表して、15班のメンバーが発表しました。 「進行するAIの幻覚」の表題が提示されました。見ている生徒の顔には「幻覚?????」という表情。AI技術の課題である「ハルシネーション」(事実に基づかない回答をして、それをさも合っているかのように回答する現象)に焦点を当てました。この実態を解明して、更に技術を向上させることにより、名誉毀損、情報漏洩などのAIによる被害を防ぎたいとの思いを語りました。 研究にはChatGPTを用いて、2023年3月にリリースされたGPT4.0の性能をGPT3.5(2022年11月リリース)との性能の比較をするために、四則演算をさせ、データ処理をし、その分析をして結論を導き出しました。正答率は明らかに上昇しているが、ハルシネーションも同時に進行していて、妥協できなくなってきていることを指摘。研究のこれからの展望と、助言者の方々への感謝を伝えてプレゼンを終了。 司会者が「質疑応答」と言うと、すぐに2年生数名から手があがり、内容についての具体的な質問が出て、AIに対する関心の高さが表れていました。
【2年生のSDS探究発表 オーラルセッション 10:40−12:25】2年生の16のグループが4つの教室に分かれて口頭発表を行いました。